介護福祉師


第一章:孤独

3.秋

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 日々は静かに、そして音も立てずに過ぎて行く。そして決して戻ることはできない。部屋にひきこもって以来、日々が飛ぶように過ぎていった。あまりに早くついていくことが出来ない。
 しかし部屋の中の時間は止まったままだった。
 閉め切ってあるカーテンを少し開け部屋の外を眺めた。外の景色を隙間から見ていると、たった独り取り残されたような気分になる。
 季節は秋も深まり、山々は紅葉で赤く染まっていた。
「もう秋なのか・・・。」
 秋独特の淋しい風景を目の当たりにすると、より一層心に何か乗っているような重い感覚に襲われる。
 私は今日も独り部屋の外に出ることなく一日を過ごした。病気でも何でもない。熱があるわけでもなく、咳が出ることもない。身体的にはいたって健康である。ただ、なぜか体中が倦怠感に襲われ、何もやる気が出ない。ため息ばかり出て、体に力が全くと言っていいほど入らない。頭の奥がズキズキと痛む。そして心の中は絶望の底にいて、何も考えられない。何もしていないのに、毎日が辛くて仕方がない。何もしていないからだろうか。朝起きるとき、夕陽を見たとき、夜寝ようと思いベッドに横になったとき、無性に辛くなる。夜、うまく寝付くことが出来ない。酒を山ほど飲む。しかし2時間くらいおきに必ずと言っていいほど目が覚める。眠りが浅い。だから起きても上手く頭が回らない状態となっている。





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