介護福祉師


第一章:孤独

2.回想

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 私は他人とより良い関係を築くという能力が著しく欠けていました。学生時代気の合わない人間とは極力距離を置いてきました。しかし社会に出たらそうはいきません。気の合わない人間と付き合っていかなければならなくなる場面が数多くありました。その時、私にはどう対応したらいいか、どう接していけばいいのかわかりませんでした。結果、気まずい関係を改善することができず、気持ちも内に向いてしまい、孤立を深める結果となってしまったのです。
 そして集団で行動するということも私にはできませんでした。今まで一人を好み、集団で何かをやり遂げるという経験のない私には、会社という組織の中でどのように動いたらいいのかわかりませんでした。
 他の人間とより良い関係を築くこと、そして集団の一員として生活すること。この2つが私にはとても高い壁のように思えて恐れてしまい、部屋の中に閉じこもる結果となってしまったのです。

 もう一つ私を苦しめたのが会社から逃げ出したということでした。会社生活の終り頃、仕事中うまくいかないことが辛く、ただここを辞めたい、逃げ出したいとばかり考えていました。仕事を前向きな考え方で行おうとはせず、どのように辞めたらいいのかそればかり考えていたと思います。その結果、当然のことですが何の打開策も見出すことができませんでした。
 次の会社に就職したとしても、同じことの繰り返しでしょう。
 私の心の底では、自分が無能な人間だということを、他の人間に知られるのが怖かったのです。そしてそれを自分で認めることも、とても恐ろしく感じました。

 私には忍耐力という言葉も、全く備わってはいませんでした。もう少し耐えることが出来ていたら、結果は変わっていたかもしれません。だからこそ、立ち向かうことをせず、ただ逃げ出した私を、私は心から恥ずかしく思ったのです。





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