介護福祉師


第一章:孤独

5.動き出した時間

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 次の日ハローワークにてパソコンを開き、サービス業の欄をクリックした。次に出る業種の欄は介護、福祉の仕事という所をクリックする。
 平成不況の中にあって、介護の職業は比較的多く募集があった。新聞に書いてあった介護人員の不足ということは本当らしい。
 募集欄を一番上からチェックする。するとほとんどの所が、ホームヘルパー2級の資格が必要と書いてあった。

「ホームヘルパー2級・・・。」

 聞いたこともない資格だった。日本語訳すると、ホームが家、ヘルパーが手伝う人ということになる。直訳すると家事手伝い2級といったところだろうか。介護の仕事をするのに、家事手伝いの資格を取らなければならないのか・・・。この時点で悩むほど私は介護の仕事に対しては全くの素人だった。
 とりあえずこの資格について調べることにし、ハローワークを後にした。
 家に帰り、インターネットで検索してみると、大体のことがわかってきた。
 介護の仕事というものは、資格がないと全くと言っていいほど仕事にはつけない。しかしその資格というのは、介護福祉士、社会福祉士から始まり、ホームヘルパー1、2級。ケアマネージャーなどかなりの数がある。介護福祉士、社会福祉士は福祉大学、または福祉専門学校を卒業するか、介護現場で3年以上働かないと取得できないもので、何の経験もない私には、取得することが出来なかった。
 調べを進めると、ホームヘルパー2級という資格は、約2カ月の研修で取得でき、多くの人がこの資格を取得後、介護現場で働くとのことだった。
 どうしたらこの資格を取得できるかを調べると、民間の会社で講座を開いており、そこに申し込み、研修を受けると資格できるとのこと。しかしその費用が7万円ほどかかると書いてあった。
 ひきこもりを長い間やっていた私に、貯金などあるはずもなく、その費用を工面することが出来そうになかった。悩んだが、親に頼るしか方法がなく、父に事のいきさつを説明し頭を下げ、お金を出してほしいと頼んだ。
 父は私の話を聞くと、意外にもすぐにお金を工面してくれた。
 ありがとう、と礼を言い、そのお金を受け取ると、必要な書類を取り寄せた。

 数日後、ホームヘルパー2級講座と書いてある封筒が私の家に届いた。その書類を読むと、講座は毎月開かれていると書いてあり、定員が30名とのことだった。すぐに書類に必要事項を書き、講座を開いている会社に提出しに行った。すると受付で、来月から行われる講座がまだ定員に達しておらず、空きがあるので参加できるという返答が返ってきた。
 あと1週間ほどで来月になる。早い展開に少々戸惑ったが、私にゆっくりしている時間はなく、その講座に参加することを決めた。

 来月の初めから講座が始まる。私は期待と不安を抱きながら、講座が始まる日を待った。




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