介護福祉師


第一章:孤独

2.回想

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 私は目立たない生徒でした。
 自分の意見を積極的に言う事はなく、人の意見に従い反抗することはありませんでした。授業中、手をあげて発言することは稀だったので、学校の先生は誰一人として私のことを覚えていないでしょう。クラスメイトが覚えているかどうかも疑問です。人付き合いがあまり得意ではありませんでしたので、友人と呼べる人は何人かいましたが、親友と呼べる人はいませんでした。誰一人として。
 学校が終わるとすぐ家に帰り部屋でゲームをし、それに飽きるとやることが見当たらなかったため、仕方なく机に向い勉強をしました。そのため学校での成績がよく、通知表を親に見せると、両親は嬉しそうな顔をしてくれました。私はその笑顔を裏切らないよう、より一層机に向かい勉強しました。
 そのかいもあり、県内でトップクラスの進学校に進むことができました。

 高校時代の私は、頭のいい人間ばかり揃っている人間の中でも、成績は常に上位を保っていました。担任の先生には一流の大学を狙えると言われたほどです。
 しかしそれもそのはずで、他の生徒は野球だサッカーだとスポーツに励んでいたり、恋愛を楽しんでいるときも、私は何の成長もなく、学校が終わるとすぐに家に帰り、やることがないので勉強ばかりしていました。この頃にはゲームにも飽きてしまっていて、時間をつぶす方法が、勉強以外見当たりませんでした。
 運動系の部活に入ることはなく、かといって文化系の部活にも在籍はしませんでした。高校に入っても私の人見知りは治ることはなく、人と話すことが苦手なままでした。
 そのため恋愛とも無縁な生活を送りました。好意を持った人もいましたが、気が小さいため、どうしてもその人に話しかけることができず、何かの拍子で話す機会があったとしても、緊張して話している途中で頭の中は真っ白になり、何度も舌を噛んでしまい、うまく話すこともできなくなってしまい、自分の意思を相手に伝えることができませんでした。結局高校3年間、女性とは縁のない生活を送りました。
 学生時代、私は物事に熱中したという記憶がありません。特別な思い出がないといったらいいのでしょうか。ただあっという間に時間が過ぎて行ってしまったというような感想しかないのです。

 そして月日は流れ、進路を決める時期が来たのです。
 成績は上位を保っていたものの、進路を決める時点で悩みました。なぜなら高校3年生の時点で私には夢というものがなかったのです。周りのクラスメイトは弁護士になる、保育士になりたいと夢に向かい進路を決めていましたが、私はそれらの人を遠い存在のように見ていました。将来どのような職業に就くのか、どのような職業がわたしにむいているのか皆目見当もつきませんでした。
 周りの人間が大学に行く、そして学歴社会の中、大学に行かなければいいところに就職が出来ないという漠然とした思いから、大学に進学することを決めたのです。
 成績は良いほうだったので、大学は全国でも名の通った、有名な大学に進学することができました。





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