介護福祉師


第一章:孤独

1.引きこもり

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 誰かに見られているような気がする。そして部屋にひきこもり、仕事もしていない私を他人が笑っているような錯覚に襲われる。
 外から歩いている人の声が聞こえると、あわてて窓から私が見えないような場所に隠れる。そして急に息苦しくなり、激しい動悸が私を襲う。耳を塞ぎその場にうずくまった。他人の目が怖い。私の存在を他人に知られることが怖い。
来る日も来る日も、カーテンを固く閉ざした部屋で、時間が過ぎるのを震えながら、ただ過ごしていた。
 ひきこもりを始めて1ヶ月くらい経ったとき、私は部屋を出ようと決心しドアノブに手をかけたことがあった。しかしドアノブを回そうとしたその時、外から近所の人の笑い声が聞こえてきた。
 すると突然、苦しいほどの動機が私を襲い、耐えきれなくなりドアの前に倒れこんでしまった。自分でも何がどうなったか分からない、とにかく心臓の音が体中に響き、呼吸が出来ないほどの発作に襲われた。
 床に寝転がり、喉をかきむしった。手足の先は痺れ震え始め、動悸は勢いを増してくる。
「苦しい・・・誰か助けてくれ。」
 声にならない声を上げた。体中に戦慄が走る。このまま死んでしまうのではないか・・・。家には誰もいない。助けてくれる人など存在していなかった。 体中から汗が噴き出してくる。意識が遠くなり頭の中は真っ白になった。
 懸命に床に這いつくばり、必死に呼吸を繰り返した。動悸が治まることをただ祈る。
 ようやくその発作から解放されたのは、それから30分ほど経った時だった。15分ほど耐えたころ、ようやく呼吸ができるようになり、遠くなっていた意識もはっきりしてくるようになった。しかし手足の痺れはまだ残り、起き上がろうとすると頭痛と、眩暈が私を襲った。しばらくの間、天井を見つめながら時が過ぎ、体が回復するのを待った。
 それ以来、私は外に出ることを極端に恐れるようになった。外に出ようとすると激しい呼吸苦と動機が私を再び襲うような感じがして、ドアノブに手をかけることを恐れてしまった。





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